フォルスター・リサーチの感情価値モデル

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フォルスター・リサーチが提唱する感情価値モデルは、消費者の感情的ニーズを体系的に理解するためのフレームワークです。このモデルでは、消費者の感情的ニーズを以下の4つのカテゴリーに分類します。これらのカテゴリーは、人間の根本的な欲求と深く結びついており、消費行動の強力な動因となっています。

達成感(Achievement)

成功、誇り、能力の実感に関連する感情価値です。消費者は自分が成し遂げたこと、習得したスキル、または獲得した地位を通じて達成感を得ます。例えば、高級車の購入、難易度の高いスポーツ用品の使用、または専門性の高い製品の習熟などが該当します。達成感を重視するブランドは、消費者に「あなたはできる」というメッセージを伝えます。

帰属感(Belonging)

つながり、受容、共感に関連する感情価値です。人は社会的な生き物であり、特定のグループやコミュニティに所属したいという欲求を持っています。特定のブランドを選ぶことで、同じ価値観や趣向を持つ人々とのつながりを感じることができます。ファッションブランド、スポーツチームのグッズ、あるいは特定の文化やライフスタイルを象徴する製品がこの価値に訴えかけます。

安心感(Security)

安全、信頼、安定に関連する感情価値です。不確実性や危険から守られているという感覚は、多くの消費者にとって重要な価値です。保険商品、セキュリティシステム、長期保証のある製品、あるいは伝統と実績を強調するブランドなどがこの価値を提供します。特に不安定な時代や環境においては、安心感を提供するブランドの価値が高まります。

自由感(Freedom)

独立、発見、創造に関連する感情価値です。自分の意思で選択し、制約から解放され、新しい可能性を探求したいという欲求を満たします。冒険を促すアウトドアブランド、創造性を刺激するデジタルツール、あるいは従来の常識に挑戦する革新的な製品などが、自由感に訴えかけます。消費者は、これらの製品を通じて自己表現や新たな経験を得ることができます。

消費者が特定のブランドや製品を選ぶ際、これらの感情価値のどれを重視しているかを理解することで、より深いレベルでのインサイト発見が可能になります。一人の消費者でも、状況やカテゴリーによって重視する感情価値が異なることも重要なポイントです。

このモデルを活用する際には、定量調査と定性調査を組み合わせることが効果的です。例えば、アンケート調査で各感情価値の重要度を測定し、インタビューやエスノグラフィー調査でその背景にある文脈や理由を深掘りするというアプローチが考えられます。

また、このモデルは製品開発やマーケティングコミュニケーションの指針としても活用できます。ターゲット消費者が重視する感情価値に合わせて製品特性を設計したり、広告メッセージを構築したりすることで、より強い共感と反応を得ることができるでしょう。感情価値の組み合わせや優先順位を理解することが、真に差別化されたブランド体験を創造する鍵となります。