学ばない人:機会の拒絶

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 私たちは時折、「学ぶチャンスは目の前にあるのに、どうしてそれを活かさないのだろう?」と感じる人たちに出会うことがありますね。世間では、そういった方々を「学ばない人」とひと括りにしてしまう傾向があるようです。ですが、この言葉が指すのは、決して「頭が悪い」とか「能力がない」といったネガティブな意味合いではありません。むしろ、知的な可能性は十分に持ち合わせているにもかかわらず、何らかの理由でその学習意欲や行動が表に出てこない状態を指すことがほとんどでしょう。

 では、一体なぜ、人は目の前にある学びの機会に手を伸ばさないのでしょうか? その背景には、非常に複雑で個人的な「心の壁」が横たわっていることが多いのです。この「心の壁」というのは、過去の経験や、その人なりの考え方、あるいは日々の生活の中で培われてきた価値観から生まれる、見えない障壁のことですね。たとえば、かつて学校で勉強につまずいてしまったり、あるいは先生や友人から心ない言葉をかけられたりといった、苦い経験が深く心に刻まれている場合があります。そんな記憶が、新しい学びへ踏み出すことへの強い恐怖心や苦手意識へとつながってしまうこともあるでしょう。また、現在の生活に特に不満がなく、毎日が平穏に過ぎていると、「あえてしんどい思いをしてまで、何かを変える必要はないのではないか?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。現状維持こそが、最高の幸せだと考えているケースもあるわけです。さらに、そもそも「学ぶこと」自体にどれほどの価値があるのか、いまひとつピンと来ていない、あるいは家族との時間や趣味といった、もっと大切なことがあると考えている可能性も大いに考えられます。私たちはそれぞれ、自分なりの優先順位を持って生きていますから、学びがそのリストの上位にないことも自然なこと、と言えるのではないでしょうか。

 ここで、とても大切な視点があります。「学ばない人」という表現は、誰かを一方的に責めたり、レッテルを貼ったりするために使う言葉では決してない、ということです。むしろ、これは私たちが、目の前のその人を深く理解しようと努め、そして「どうすれば、その人の学びへの一歩を後押しできるだろうか?」と真剣に考えるための、大切な出発点だと捉えるべきでしょう。多くの場合、適切な環境とサポートがあれば、彼らの内なる可能性は花開くはずです。例えば、失敗しても大丈夫だと心から安心できるような、温かい学習の場を提供すること。あるいは、その人が心から「面白い!」と思えるような、興味をそそる内容や方法で知識を伝える工夫を凝らすことも有効かもしれません。また、過去に負った心の傷をゆっくりと癒していく手助けをすることも、学びへの意欲を取り戻す上で欠かせないプロセスとなるでしょう。かつて抱いた苦手意識や、無意識のうちに作ってしまった「自分にはできない」という思い込みを、そっと解き放してあげるような寄り添い方が求められます。社会全体として、彼らをただ批判のまなざしで見るのではなく、一人ひとりに合った「学びへの扉を開くための鍵」を一緒に見つけていく。そんな温かい姿勢こそが、いつか「学ばない人」が「学ぶ人」へと変わっていく、確かなきっかけとなるのではないでしょうか。誰もが持つ学びの芽を育むために、私たちに何ができるのか、改めて問い直す時期に来ているのかもしれませんね。