ストイシズムの注意点①感情を抑えすぎない🚫

ストイシズムは感情をコントロールすることを重視しますが、感情を完全に抑え込むことは推奨しません。感情を感じることは人間にとって自然なことであり、無理に抑え込むとかえってストレスになることがあります。実際、古代ストア派の哲学者たちも、感情の存在自体を否定したわけではなく、感情と理性のバランスを重視していました。

大切なのは、感情に振り回されないことと、感情を抑圧することの違いを理解することです。例えば、怒りを感じたとき、その感情自体は自然なものですが、怒りに任せて行動するのではなく、一度立ち止まって冷静に対応することがストイシズムの教えです。セネカは「怒りについて」という著作で、怒りの感情そのものを否定するのではなく、その影響力をコントロールする方法について詳しく論じています。

感情を健全に表現する方法としては、日記をつける、信頼できる人に話す、瞑想を行うなどがあります。これらの実践を通じて、感情を認識しながらも、それに支配されないバランスを見つけることができるでしょう。感情と理性のバランスこそが、真のストイシズムの姿勢なのです。

マルクス・アウレリウスは「自省録」の中で、「あなたを苛立たせるものは、それ自体ではなく、あなたの判断である」と述べています。これは感情そのものを否定するのではなく、私たちが物事をどう捉えるかが重要だということを示しています。つまり、ネガティブな感情が生じたとき、その感情を無視するのではなく、なぜその感情が生じたのかを理解し、適切に対処する能力を育むことが大切なのです。

また、ストイシズムでは「共感」や「思いやり」といったポジティブな感情も重視されています。他者への思いやりや社会的な結びつきを大切にすることは、ストア派の倫理観の中心です。感情を抑圧するのではなく、賢明に表現し、自分と周囲の人々の幸福に貢献するように活かすことが、現代におけるストイシズム実践の理想的な姿と言えるでしょう。