第49章:まとめとこれからの行動 – 明るい未来を切り開く、私たちの挑戦

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 これまで、経済産業省が考えた「未来人材ビジョン」という大きな計画について、皆さんと一緒にじっくり見てきました。この計画は、これからの社会で活躍するために大切な「56の能力」とは何か、そして、その能力を一人ひとりが最大限に伸ばせるような社会に変えていくにはどうすれば良いか、その道しるべを示してくれています。

 この章では、これまでの学びを振り返り、未来に向けて私たちが具体的にどう行動すべきか、もっと分かりやすく、実践的に考えていきましょう。未来は、誰かが与えてくれるものではありません。私たち自身の行動一つ一つによって作られるものです。さあ、一緒に次の一歩を踏み出す準備を始めましょう。

未来を担う56の能力って?

 未来人材ビジョンの中心にあるのは、「意識・行動」「ビジネス力」「スキル」「知識」という4つのグループにまとめられた「56の能力」です。これらは、ただの専門知識のリストではありません。たとえば、「まだ知らない問題にも積極的に挑戦する気持ち(意識・行動)」や、「難しい問題をいろんな角度から考えて解決する力(ビジネス力)」、あるいは「デジタル技術を上手に使う能力(スキル)」や、「いつも新しいことを学び続ける探究心(知識)」といった、どんな時代でも必要とされる力や、変化の激しい現代に特に大切な力が含まれています。

 これらの能力は、私たちの仕事や普段の生活をより豊かにし、充実した人生を送るための道しるべになるでしょう。例えば、毎日の仕事で「なぜ?」と疑問を持ち、今のやり方に満足せずに改善策を探すことは、「問題を見つける力」を高める第一歩です。また、違う意見を持つ仲間と協力してプロジェクトを進めることは、「協力する力」を育てます。これらは決して特別なことではなく、毎日のちょっとした意識から育っていくものなのです。

これからの働き方はどう変わる?~ジョブ型採用といろんな働き方~

 日本の働き方は、長い間「メンバーシップ型」と呼ばれる、会社に長く勤めて、いろいろな仕事を経験しながら成長するスタイルが一般的でした。しかし、未来人材ビジョンが目指すのは、仕事内容をハッキリさせて、その仕事ができる人を採用する「ジョブ型採用」に変えていくことです。これにより、一人ひとりの専門的な能力がもっと評価され、その能力に応じたお給料や役割が与えられるようになります。

 また、働く場所や時間の融通も大きく広がります。在宅勤務、兼業・副業、短時間勤務など、いろんな働き方が当たり前になることで、子育てや介護と仕事の両立、あるいは自分の学びの時間を確保するなど、個人の人生の状況や大切にしたいことに合わせた働き方ができるようになります。例えば、IT企業で専門スキルを持つ人が、地方にいながら在宅で貢献したり、NPO活動と本業を両立させたりといった選び方が、もっと身近になるでしょう。会社は優秀な人を引きつけ、長く働いてもらうために、柔軟な働き方をうまく取り入れることがとても大切になります。

学びの進化~会社と大学の連携、学び直し、人生を通した学習~

 学校を卒業したら勉強は終わり、という時代はもう過去のものです。未来人材ビジョンでは、会社と大学・研究機関が協力して、社会の変化に合った実践的な教育プログラムを作ることの大切さが強調されています。また、社会人が新しい知識やスキルを身につけ、新しい仕事に就く、あるいは今の仕事で求められる能力を高める「学び直し(リスキリング)」が、キャリアを作る上で鍵となります。

 これは、誰もが人生を通して学び続け、自分の価値を高めていく「生涯学習」の考え方に基づいています。例えば、AI技術が進歩するのに合わせて、文系出身のビジネスパーソンがプログラミングのオンライン講座を受けたり、定年を迎えた人が地域社会で活躍するために新しいスキルを身につけたりする、といった具体的な行動が求められます。会社は従業員の学び直しを助け、教育機関は社会人の学びをサポートする多様なプログラムを提供することで、社会全体の学びたい気持ちを高める協力し合う仕組みが作られていくでしょう。

いろんな人を力に~みんなが活躍できる環境と外国の人との協力~

 同じような人ばかりが集まる組織では、新しいアイデアや新しいものは生まれにくいものです。未来人材ビジョンは、性別、年齢、国籍、障がいの有無、性的指向、経験など、あらゆる「違い」を大切にし、それを組織の強みとして生かす「いろんな人がいること(多様性)」を進めることを掲げています。さらに、いろんな人々が互いに認め合い、それぞれの能力を最大限に発揮できるような環境を整える「みんなが活躍できる環境(インクルージョン)」の視点もとても大切です。

 また、日本国内だけでなく、世界中の優秀な人を積極的に受け入れ、一緒に働く「外国の人とも一緒に働くこと(グローバル化)」も大切なテーマです。例えば、外国人の留学生をもっと採用したり、違う国の文化を理解するための研修をしたりすることで、組織はもっといろんな視点やアイデアを取り入れることができます。いろんな背景を持つ社員が集まることで、新しい商品開発のアイデアが豊富になったり、海外での事業展開がスムーズになったりといった良いことが期待されます。これは、組織の競争力を上げるだけでなく、社会全体を活気づける上でも非常に大切なことなのです。

新しいものを生み出す土台を作る~問題を見つける力と新しいアイデアを生み出す力~

 未来の社会では、今までの枠にとらわれない新しい価値を生み出す「新しいものを生み出すこと(イノベーション)」が、会社や国の成長を引っ張ります。そのためには、ただ与えられた問題を解決するだけでなく、「まだ見つかっていない問題を見つける力」と、その問題に対して「前例のない解決策を新しく生み出す力」がとても大切です。

 未来人材ビジョンは、こうした新しいものを生み出すための人材育成を重視しています。例えば、失敗を恐れずに新しいことに挑戦できる社風を作ったり、部署を超えた自由なアイデアを促すワークショップを定期的に開いたりすることが考えられます。また、違う業界の人と交流して新しい視点を取り入れることも有効です。研究開発部門だけでなく、営業やマーケティング、人事といったあらゆる部門の社員が、毎日の仕事の中で「もっと良い方法はないか」「新しいサービスを作れないか」と考え、いろいろ試すことで、組織全体に新しいものの種がまかれていくのです。

みんなで力を合わせる~会社、学校、国が協力する人材育成の仕組み~

 未来の人材を育てるためには、一つの会社や一つの学校だけの努力では限界があります。未来人材ビジョンが提唱するのは、会社(産)、大学や専門学校などの教育機関(学)、そして国や自治体(官)が、それぞれの役割を理解し、密接に協力し合う「協力し合う仕組み(エコシステム)」を作ることです。これにより、社会全体で質の高い人材を継続的に生み出し、育てていく環境が整います。

 たとえば、会社は将来どんなスキルが必要になるかを教育機関に伝え、教育機関はそれに応じた授業内容を作ります。国は、その連携を助けるためのお金を出す制度や、法律を整えることを進めます。具体的な例としては、会社が大学の研究にお金を出して、学生が会社の課題に取り組むインターンシップを増やす、地域の中小企業と地元の高校が協力して実践的な職業訓練プログラムを行うなどが挙げられます。このような協力関係を通じて、学校で学んだことがすぐに社会で役立つようになり、会社は必要な人材を安定して確保できるようになるという良い流れが生まれるのです。

会社が今すぐ取り組むべきこと:変化を恐れず、人を育てる投資を

  •  人材を大切な財産として考える経営に変えることを宣言し、実行する: 会社は「人は一番大切な財産である」という考え方を経営の一番大切な柱とし、従業員の能力を伸ばしたり、やる気・愛着(エンゲージメント)を高めたりすることに積極的に投資すると、外にも中にもハッキリと伝えましょう。ただのスローガンではなく、具体的な予算の使い方や人事評価制度の見直しなど、行動が伴うことが大切です。例えば、投資家向けの説明資料(IR資料)に、人材への投資額とその効果をきちんと書き、株主や市場に対して会社の長く続く成長戦略としてアピールすることも良い方法です。
  •  教育へのお金を大きく増やし、続けて行う: 従業員が新しいスキルを学ぶための研修費用、資格を取る支援、オンライン学習のサービスを入れるなど、教育へのお金を惜しまない姿勢が求められます。これは短期的な出費ではなく、未来への確実な良い結果ととらえましょう。例えば、全社員が年間〇時間以上の学習時間を確保することを奨励し、その費用を会社が全部負担する、といった具体的な取り組みも考えられます。
  •  いろんな採用方法を探し、多様な人材を増やす: 新卒だけを一括で採用するだけでなく、経験者採用、兼業・副業の人材活用、障がい者採用、外国の人材を積極的に採用するなど、いろんな背景を持つ人が組織に加わる機会を増やしましょう。これにより、これまでになかった視点やアイデアが組織にもたらされ、新しいものを生み出す力になります。例えば、履歴書から性別や年齢、顔写真をなくす「性別や年齢などを隠して採用すること(ブラインド採用)」を導入し、いろんな人の応募を増やすことも有効な方法です。
  •  社員の学び直し(リスキリング)を積極的に助ける: 時代の変化に対応できるよう、従業員が新しいスキルや知識を身につけるための機会を積極的に提供しましょう。社内研修だけでなく、外部の専門機関と協力したプログラムや、キャリアチェンジを助ける制度なども有効です。例えば、営業職の社員がデータ分析スキルを身につけ、マーケティング部門で活躍できるよう助ける、といったキャリアを新しく作り直すことを後押しする制度を設けることが考えられます。
  •  柔軟な働き方を認め、やる気・愛着(エンゲージメント)を高める: 在宅勤務、フレックスタイム制度、育児・介護休業の充実、サテライトオフィス(会社の外にあるオフィス)の設置など、従業員が自分の生活スタイルに合わせて働ける選び方を増やしましょう。これにより、従業員の仕事とプライベートのバランスが良くなり、仕事への満足度や会社への貢献したい気持ちが高まります。例えば、週に2日は在宅勤務を必須とする、働く時間を自由に決められるフレックス制度を導入するといった具体的な制度設計が大切です。
  •  教育機関や他の会社と協力し、業界全体で人を育てる力を高める: 自分の会社だけでなく、業界全体の人材を育てるレベルを上げるために、大学や専門学校、同じ業界の他の会社と積極的に協力しましょう。一緒に研究したり、インターンシップを受け入れたり、情報交換をしたりすることを通じて、お互いに学び合い、成長できる協力し合う仕組みを作り上げます。例えば、業界団体が中心となって共通の学び直しプログラムを作り、参加企業で共有するといった取り組みも有効です。

教育機関が今すぐ取り組むべきこと:社会と協力し、実践的な学びを提供

  •  産業界のニーズに合わせた授業内容に改革する: 会社が求める知識やスキル、例えばAI、データサイエンス、プログラミング、デザイン思考などを授業内容に積極的に取り入れましょう。産業界の第一線で活躍する専門家を先生として招いたり、一緒に授業を企画したりすることも有効です。これにより、学生は卒業後すぐに社会で活躍できる実践的な能力を身につけることができます。
  •  探求する力と新しいアイデアを生み出す力を育む教育方法を入れる: 一方的に知識を教え込むだけでなく、学生自身が疑問を持ち、深く調べ、新しいアイデアを生み出す力を養う教育に力を入れましょう。PBL(課題解決型学習)や話し合い、グループワークなどを取り入れることで、自分で考え、行動する主体性を育てます。例えば、地域の問題をテーマにしたPBLを導入し、学生が住民や自治体と協力しながら解決策を提案する、といった実践的な学びの機会を増やすことができます。
  •  社会人の学び直しを積極的に受け入れる: 学部や大学院だけでなく、社会人向けの学び直しプログラムや短い期間の講座を充実させ、学びたい社会人がいつでも利用できる機会を提供しましょう。オンライン講座を増やすことも大切です。例えば、会社と提携して、従業員向けに合わせた学び直しプログラムを提供する、といった柔軟な対応が求められます。
  •  会社との共同研究やインターンシップを増やす: 研究室と会社が一緒にプロジェクトを進めたり、学生が会社で実務を経験するインターンシップの機会を増やしたりすることで、実践的な学びを深めるとともに、会社と学校の交流を促します。これにより、学生は将来の仕事を具体的に想像しやすくなり、会社は優秀な人材と早くから知り合うことができます。
  •  国際的な競争力を高め、世界で活躍できる人材を育てる: 留学生を積極的に受け入れ、英語での授業や違う国の文化を交流する機会を増やしましょう。海外の大学との協力プログラムや、二つの学位を取れる制度なども有効です。これにより、学生はいろんな考え方に触れ、国際社会で活躍できる広い視野と能力を身につけることができます。
  •  お金の基盤を強くし、質の高い教育を続けて提供する: 寄付金や外部のお金を集めたり、会社と学校の連携でお金を稼いだりするなど、いろんな方法でお金の基盤を安定させ、教育・研究の環境を充実させましょう。これにより、常に一番新しい設備や優秀な先生を確保し、質の高い教育を続けて提供できる体制を整えることが可能になります。

国が今すぐ取り組むべきこと:社会全体で学びを支える土台作り

  •  人材育成へのお金の支援を増やす: 会社や個人が学び直しや能力開発に取り組むための助成金や補助金制度をさらに充実させ、多くの人が安心して学び直せる環境を整えましょう。税金が安くなる制度を入れることも有効です。例えば、特定のデジタルスキルを身につけた個人に対して、授業料を大きく助ける、中小企業が従業員の学び直しに投資する際のお金の一部を負担するといった支援策が考えられます。
  •  雇用制度の改革を進め、人が動きやすくする: 会社に長く勤めることや、年齢で給料が決まるなどのこれまでのやり方にとらわれず、個人のスキルや専門性を大切にするジョブ型雇用への移行を後押しする法律やルール作りを進めましょう。転職やキャリアチェンジがもっとスムーズにできるように、労働市場の人が動きやすい仕組みも大切です。例えば、会社が人を解雇しやすくするルールと、困った時に助ける仕組み(セーフティネット)を両方進めることで、会社は変化に対応しやすくなり、働く人は新しいことに挑戦しやすくなります。
  •  教育制度の改革を思い切って行い、実践的な学びを促す: 小学校から大学までの教育で、座って勉強するだけでなく、自分で問題を見つけて解決する学習やプログラミング教育、キャリア教育などをさらに強くしましょう。社会の変化に柔軟に対応できる授業内容への見直しを進めます。例えば、小中学校でのプログラミング教育をもっと義務教育の早い段階から導入し、高校や大学では会社と連携したプロジェクト学習を必ず行うようにするなど、根本的な改革が必要です。
  •  会社、学校、国が協力する仕組みを整え、助ける: 会社、教育機関、研究機関、自治体などが協力して人材育成に取り組むための場所を作り、情報共有や共同プロジェクトを促すための支援策を行いましょう。これにより、それぞれの得意なことを生かした相乗効果が期待できます。例えば、地域ごとに「人材育成の協力団体」を作り、会社からのニーズを集め、教育機関のプログラム開発、自治体のマッチング支援を一元的に行う仕組みを構築することが考えられます。
  •  外国人の受け入れを促し、多様性を高める: 日本が国際的な競争力を保つためには、優秀な外国人の力も必要です。ビザの取得条件を緩めたり、日本語を学ぶ機会を増やしたり、生活支援を充実させたりするなど、外国人が日本で働きやすく、暮らしやすい環境を整えましょう。例えば、特定の技能を持つ外国人のビザの種類を増やしたり、外国人向けの仕事探し支援センターを全国に置くといった施策が考えられます。
  •  計画を常に新しくし、政策を進化させる: 社会や技術の進歩は止まりません。未来人材ビジョンも一度作ったら終わりではなく、常に最新の状況に合わせて見直し、必要な政策を柔軟に変化させていく必要があります。定期的に専門家の会議を開いたり、国民からの意見を聞いたりすることを通じて、常に時代のニーズに合った計画であり続けるよう努力しましょう。

個人が今すぐ取り組むべきこと:未来は自分自身で切り開く

  •  学び続ける気持ちを持ち、自分を成長させることを怠らない: 新しい知識やスキルを積極的に学び、常に自分自身を新しくし続けましょう。本を読む、オンライン講座を受ける、資格取得に挑戦する、同僚や上司から学ぶなど、学ぶ方法はたくさんあります。例えば、月に一冊は専門書を読む習慣をつける、興味のある分野の無料セミナーに参加してみる、といった小さなことから始めることができます。
  •  変化を恐れず、新しいことに挑戦する: 経験のない仕事に手を挙げたり、新しいプロジェクトに参加したり、違う業界の人との交流会に出かけたりするなど、自分が慣れている場所(コンフォートゾーン)から一歩踏み出して新しい経験を積みましょう。失敗を恐れず、そこから学ぶ気持ちが大切です。例えば、これまで使ったことのない新しいデジタルツールを仕事に取り入れてみる、社内公募制度に応募して部署を替わることに挑戦してみる、といった具体的な行動が変化を生みます。
  •  自分のキャリアを自分で計画する: 会社任せにするのではなく、「自分はどうなりたいのか」「どんな仕事で社会に貢献したいのか」という問いをいつも持ち、自分のキャリアパスを自分で考え、行動しましょう。上司とのキャリア面談をうまく活用し、必要なスキルや経験について積極的に相談することも大切です。例えば、5年後、10年後の理想の姿を具体的に描き、そこに至るために必要なステップを逆算して考える「バックキャスティング」という方法を使うことが有効です。
  •  いろんな人と協力し、視野を広げる: 違う部署、違う業界、違う文化を持つ人々と積極的に交流し、多様な考え方に触れましょう。ボランティア活動に参加したり、地域のコミュニティ活動に顔を出したりすることも、新しい視点を得る良い機会になります。これにより、物事をいろんな角度から考える力が養われ、より新しい解決策を生み出すヒントが得られます。
  •  社会の問題に関心を持ち、解決に貢献する: 環境問題、貧困、少子高齢化など、身近な社会の問題に関心を持ち、自分に何ができるかを考えましょう。NPO活動に参加したり、本業で社会に役立つプロジェクトに関わったりするなど、様々な方法で貢献できます。例えば、会社の社会貢献活動(CSR活動)に積極的に参加する、ゴミの分別をしっかり行うなど、毎日の生活の中からできることを見つけて行動に移すことが大切です。
  •  後輩の育成にも積極的に関わる: 自分が持っている知識や経験を若い世代に伝えることも、未来の人材育成に貢献する大切な役割です。先輩としてアドバイスをしたり、OJT(仕事を通じての教育)を通じて実践的なスキルを教えたりするなど、様々な形で助けましょう。例えば、週に一度、若手社員とのランチミーティングを設定し、キャリアの相談に乗る、自分の失敗談を共有して学びを促す、といった形で貢献できます。

「未来は予測するものではありません。自分たちの手で創り出すものです。私たち一人ひとりの毎日の行動こそが、社会を動かし、より良い未来を作っていくのです。今日この瞬間から、あなたにできる、小さな一歩を始めてみませんか?」

 未来人材ビジョンは、とても壮大で、時には圧倒されるような大きな計画に思えるかもしれません。しかし、その実現は、遠い未来の特別な誰かに任されているわけではありません。むしろ、私たち一人ひとりの、今日という日における気持ちの変化と、具体的な行動を積み重ねることによってしか達成できないものなのです。

 特に、人事労務を担当する皆さんは、この変化の最前線に立つ、非常に大切な役割を担っています。会社の経営陣に対して、人材を大切な財産として考える経営(人的資本経営)の重要性を説明し、現場の社員一人ひとりが「自分らしく、最大限に輝ける」ような環境を整え、その成長を心から助けていくこと。この地道で、しかし情熱のこもった取り組みが、やがて組織全体に活力を生み出し、ひいては社会全体を変革する大きな波となるでしょう。

 完璧を目指す必要は、決してありません。まずは、目の前にある「小さな一歩」から始めてみましょう。例えば、今ある研修プログラムに、時代のニーズに合った新しいテーマを一つ加える。あるいは、社員の声に耳を傾ける「1対1の面談(1on1ミーティング)」の機会を増やす。あるいは、週に一度の「在宅勤務デー」を試しに導入してみる。他の会社で成功した例を学び、自分の会社に合う形で取り入れてみる。できることは、本当にたくさんあります。

 大切なのは、行動し、その結果を注意深く見て、そこから学んだことを次に生かすという計画→実行→評価→改善の繰り返し(PDCAサイクル)を、粘り強く続けていくことです。この続けて改善していくプロセスこそが、組織全体の長く続く成長を支える土台となります。

 未来は、確かにどうなるか分からない要素でいっぱいです。変化のスピードは速く、時には不安や戸惑いを感じることもあるかもしれません。しかし、決して恐れる必要はありません。私たち人間には、どんな難しい状況にも対応し、これまでの考え方にとらわれずに新しい価値を創り出す、無限の可能性が秘められています。

 未来人材ビジョンが示す「56の能力」を道しるべとして、私たち一人ひとりが自分の得意なことを伸ばし、お互いに助け合い、協力し合うならば、どんなに大きな壁もきっと乗り越えることができるでしょう。希望に満ちた、より豊かな未来社会を築くための人材育成への挑戦。その壮大な物語は、まさに今日、この瞬間から始まります。

 あなたの、その小さな一歩が、日本の、そして世界の未来を、確実に良い方向へと変えていく力となるのです。さあ、希望を胸に、行動を起こしましょう!

大切なポイント:未来人材ビジョンを成功させる鍵

 未来人材ビジョンを実現するには、ただ理想を語るだけでなく、具体的な行動が求められます。その鍵を握るのは、次の点です。

  •  経営陣の本気と、本気で取り組むこと: 人材を大切な財産として考える経営(人的資本経営)は、口先だけでなく、予算、評価、人材配置といった具体的な経営戦略に落とし込まれているか。短期的な利益だけを追わず、長い目で見た人材への投資を覚悟できるか。
  •  従業員一人ひとりの自分事としてとらえる気持ち: 会社や制度に「与えられる」のを待つのではなく、自分で学び、キャリアを築く「自分事としてとらえる気持ち(オーナーシップ)」を従業員が持てるか。そのためのやる気が出る仕組みや支援は十分か。
  •  成功した例をみんなで共有し、広げていくこと: 良い取り組みが一部の会社や部署だけで終わらず、業界全体、社会全体へと広がっていく仕組みがあるか。失敗を恐れずに挑戦できる土台が育っているか。
  •  変化に柔軟に対応する力: 計画そのものが、技術の進歩や社会の状況の変化に合わせて常に新しくされ、政策や取り組みも柔軟に修正・進化できるか。古い考えにとらわれず、常に一番良い方法を探し求める気持ちがあるか。

逆の見方・課題:理想と現実のズレ

 未来人材ビジョンが描く社会は魅力的ですが、それを実現するにはいろんな課題が伴います。

  •  中小企業の力: 大企業のような十分な資金や資源がない中小企業が、大規模な学び直し(リスキリング)投資や人事制度の改革を行うことはとても難しいです。国や業界団体によるもっと手厚い支援や、簡単に取り入れられる良い例を示すことがとても大切です。
  •  世代間の考え方の違い: 長年のやり方に慣れ親しんだベテラン世代と、新しい働き方を求める若い世代との間で、考え方や価値観に違いが生まれる可能性があります。これを乗り越え、組織全体で変化を進めるための丁寧な話し合いと教育が必要です。
  •  評価の難しさと透明性: ジョブ型雇用への移行や、目に見えにくい「能力」の評価はとても難しく、公平さや透明性が保たれないと従業員の不満につながりかねません。客観的な評価の基準を作り、丁寧な意見交換が求められます。
  •  学び直し(リスキリング)の成果: 多くの人が学び直しに挑戦したとしても、それが必ずしもキャリアアップや収入アップに直接つながるとは限りません。学びとキャリアのつながりをもっとハッキリさせ、学ぶことへのやる気を高める仕組み作りが課題となります。

 ITの利用格差: デジタルスキルの習得が必須となる中で、情報へのアクセス格差やデジタルツールへの利用格差が、新しい不公平を生み出さないかという心配があります。全ての人が公平に学べる環境を整えることが重要です。