記入例:日常場面での実践

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基本情報
日付:2023年6月15日
状況/場面:部署の新プロジェクト企画会議
関係者:部長、同僚5名
場所/環境:会議室、対面ミーティング

気づき(観察)
感じた感情:イライラ、焦り
身体の反応:肩に力が入る、呼吸が浅くなる
思考パターン:「またAさんの意見ばかり通る」「自分の案は却下されるに違いない」
影響したと思われるバイアス:確証バイアス、固定観念
「空気」の特徴:部長の意見に合わせる雰囲気、反対意見を言いにくい

疑問(探究)
なぜそう感じた/思ったのか:過去にAさんと意見が対立し、部長がAさんの味方をした経験がある
異なる視点の可能性:Aさんの案には実際に優れた点があるかもしれない
見落としていた情報:自分がAさんの意見を先入観で判断している可能性
自分の前提や価値観:「会議では自分の意見を通すことが重要」という考え

行動(実践)
実際にとった行動:深呼吸した後、「Aさんの案の良い点はXだと思う。そこに私の案のYの要素を加えるとさらに良くなるのではないか」と建設的な提案をした
行動の結果:部長が興味を示し、両案を組み合わせた形で進めることになった
他に可能だった選択肢:最初から対立的にならず、質問を通じてAさんの案を理解しようとする
次回試したい行動:会議前に様々な視点から考えをまとめておく

学び(振り返り)
この経験から学んだこと:対立ではなく統合的な視点を持つことの重要性
自分の思考パターンについての新たな気づき:特定の人に対する固定観念が強く、それが感情反応につながっている
「空気」との関わり方の変化:「空気」に逆らうのではなく、「空気」を変える提案ができた
今後活かしたいこと:感情に気づいたら一度立ち止まり、複数の視点から考える習慣

継続的実践計画
今週の重点観察ポイント:特定の人への先入観が生じる瞬間
習慣化したい新しい思考/行動:「でも」ではなく「そして」でつなげる思考
小さな一歩としての具体的行動:会議前に5分間、多角的な視点でメモを取る習慣
サポートリソース/人:信頼できる同僚Bさんとの定期的な振り返り
進捗確認の方法と頻度:週末に今週の会議での自分の反応を振り返る

よくある質問(FAQ)

「正しい」記入方法はありますか?

 このシートに「正解」はありません。重要なのは、自分自身の思考や感情、行動パターンに気づき、理解を深めることです。完璧に埋める必要はなく、特に印象に残った項目から始めて構いません。記入を続けるうちに、自分なりのスタイルが見つかるでしょう。

記入する時間がなかなか取れません。どうすればいいですか?

 毎日すべての項目を埋める必要はありません。特に印象的な出来事があった時だけ記録する、通勤時間に音声メモで記録する、週末にまとめて振り返るなど、自分のライフスタイルに合わせた方法を見つけましょう。最初は5分間だけでも、定期的に取り組むことが大切です。

自分のバイアスがよくわからない場合はどうすればいいですか?

 バイアスの特定は難しいものです。最初は「なぜそう思ったのか」「他にどんな見方があるか」といった疑問を持つことから始めましょう。この本で紹介したバイアスの一覧を参照したり、信頼できる人に自分の思考パターンについて意見を求めたりするのも効果的です。時間をかけて自己理解を深めていくプロセスだと考えてください。

記録を続けているのに変化を感じられません。問題ありますか?

 思考や行動パターンの変化には時間がかかります。すぐに大きな変化が見られなくても心配する必要はありません。記録を続けるうちに、以前は気づかなかった自分のパターンに気づくようになるでしょう。気づくこと自体が重要な一歩です。また、過去の記録を定期的に振り返ると、少しずつ変化していることに気づくかもしれません。辛抱強く続けることをお勧めします。

使用方法とコツ

このシートを最大限に活用するためのいくつかのポイントをご紹介します:

  • 定期的な記録:毎日数分でも構いませんので、定期的に記録する習慣をつけましょう。特に強い感情反応があった出来事や、重要な判断を行った場面は優先的に記録することをお勧めします。
  • 具体性を重視:抽象的な記述よりも、具体的な状況や言葉、感情を記録することで、より深い気づきが得られます。「イライラした」ではなく「Aさんの発言に対して胸が締め付けられるような感覚があった」といった具体的な表現を心がけましょう。
  • 判断を保留:記録する際は、自分自身を批判するのではなく、観察者の視点を持つことが重要です。「なぜこんな反応をしてしまったのか」ではなく「どのような反応が起きたか、それはどのようなパターンか」という客観的な視点で記録しましょう。
  • 定期的な振り返り:週に一度など、定期的に過去の記録を読み返し、パターンや変化を観察することで、より深い洞察が得られます。
  • パターンを探す:複数の記録を比較して、繰り返し現れるパターンを探してみましょう。特定の人や状況に対して同じ反応が出る、特定のバイアスが繰り返し影響しているなど、自分固有のパターンを発見できるかもしれません。
  • 小さな成功を祝う:バイアスに気づいた瞬間、「空気」に流されずに行動できた時、新しい視点を取り入れられた時など、小さな進歩も積極的に認め、自分を褒める習慣をつけましょう。
  • 仲間と共有する:信頼できる友人やメンターと定期的に気づきや学びを共有することで、新たな視点が得られ、モチベーションも維持しやすくなります。「バイアス気づきグループ」のような小さなコミュニティを作るのも効果的です。
  • 無理せず続ける:完璧を目指すのではなく、続けることを優先しましょう。時には記入を忘れたり、同じパターンを繰り返したりしても、自分を責めず、また再開すればよいのです。

 デジタルバージョンとして、スマートフォンのメモアプリや専用の振り返りアプリを活用するのもおすすめです。通勤時間や待ち時間など、隙間時間を活用して記録することで、継続的な実践が容易になります。

 このシートは単なる記録ツールではなく、自己理解と成長のための対話の場です。正直に、そして好奇心を持って取り組むことで、バイアスや「空気」に囚われない、より自由で創造的な思考と行動への道が開けるでしょう。何よりも、このプロセスを楽しみ、自分自身の内面の豊かさと複雑さを発見する旅として捉えてみてください。

「最も困難な旅は、自分自身の内側への旅である。しかし、それは最も実りある探検でもある」

 この実践記録シートがあなたの成長の旅の良き伴侶となることを願っています。