第25章:採用方法を増やすには?

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 会社の未来を支える良い人材を見つけるには、もう一つの採用方法だけでは足りません。これまでの「新卒をまとめて採用する」というやり方だけでなく、色々な角度から人を探し、会社に迎え入れる「様々な採用の入り口」を使うことが、これからの会社にはとても大切です。なぜなら、色々な経験やスキルを持った人が集まることで、会社全体に新しい風が吹き込み、新しいアイデアが生まれ、変化の激しい今の社会に柔軟に対応できる強い会社になるからです。

 ここでは、今の会社が注目している色々な採用方法について、一つずつ具体的に見ていきましょう。

主な採用の入り口を広げる

 これまでのように決まった時期だけの採用活動ではなく、会社の状況や市場の変化に合わせて、もっと自由に人を探す動きが広がっています。

通年採用

 通年採用は、時期を決めず、一年中いつでも人が採用できる方法です。これは、会社の成長や変化にすぐ対応し、必要なスキルを持つ人を一番良いタイミングで迎え入れることができます。例えば、新しいプロジェクトを始めることになった時、その分野の専門家をすぐに採用できるのは大きな強みです。また、海外留学を経験した人や、卒業後に一度別の道に進んでから改めて就職を考える「既卒者」など、これまでの採用スケジュールでは出会えなかった、色々な経験を持つ人にも門戸が開かれます。会社にとっても、新しい才能を見つけるチャンスが広がるのです。これにより、会社は幅広い人たちの中から、会社の成長に貢献できる最適な人を見つけることができます。

職種別採用

 以前は「総合職」として色々な仕事を経験させる採用が多かったですが、今は、特定の専門的なスキルを持つ人を、最初から「この仕事をお願いしたい」と決めて採用する「職種別採用」が重要視されています。例えば、最先端の技術開発を担う「エンジニア」、市場の動きを分析して戦略を考える「マーケター」、使いやすいデザインを作る「デザイナー」など、特定の仕事に特化したプロフェッショナルを直接採用します。これにより、入社してすぐに専門性を活かして仕事に貢献できるだけでなく、色々な仕事をこなせる人(ゼネラリスト)だけでなく、ある分野を極めた専門家(スペシャリスト)を育てる・確保することが、会社の競争力を高めることにつながるようになりました。専門性の高い人がチームに加わることで、今ある知識や技術が深まり、もっと難しい問題にも対応できるようになります。

ジョブ型採用

 ジョブ型採用は、具体的な「仕事の内容」と、その仕事をするために「必要なスキルや経験」をはっきり決めた上で、それに合う人を採用する方法です。欧米の会社では一般的ですが、日本でも取り入れる会社が増えています。例えば、「〇〇システムの開発や保守の経験が5年以上あること」「TOEICの点数が800点以上であること」といった具体的な条件を出します。これにより、採用する会社と応募する人の間で、仕事内容や期待される役割のズレ(ミスマッチ)が大きく減ります。そのため、入社してすぐに活躍できる「即戦力」の人材を見つけやすくなります。また、応募する人にとっても、自分のキャリアやスキルが会社でどのように活かせるかがはっきりわかるので、より納得して就職や転職活動ができるようになります。

色々な人を見つけるための工夫

 主な採用方法に加えて、会社はさらに視野を広げ、多角的な方法で良い人材を見つけています。

中途採用を増やす

 新卒だけでなく、すでに社会で経験を積んだ「中途採用者」を積極的に受け入れることは、会社に大きな良い影響をもたらします。彼らは前の会社で培った豊富な知識、専門技術、そして仕事の経験をすぐに活かすことができ、即戦力として期待されます。特に、違う業界から転職してきた人は、今の業界の常識にとらわれない新しい考えやアイデアを会社にもたらし、新しいものを作り出すきっかけとなることも少なくありません。例えば、IT業界出身の人が昔ながらの製造業に加わることで、仕事の効率を上げたり、新しい事業を始めたりすることに新しい風を吹き込むといった具体例が挙げられます。彼らの色々な経験は、会社に新しい刺激を与え、成長を加速させる力となります。

リファラル採用

 リファラル採用とは、会社の社員が、自分の知り合いや友達を紹介し、その人たちを採用する方法です。これは、単に採用にかかるお金を減らすだけでなく、とても質の高い採用につながると注目されています。なぜなら、紹介する社員は会社の文化や仕事内容をよく理解していて、自分の会社に合うだろう人を選んで紹介するため、会社の文化に馴染みやすいか(フィット率)が非常に高く、入社後の定着率も良い傾向があるからです。例えば、ある社員が「自分のチームにぴったりのスキルと人柄を持った友達がいる」と紹介すれば、採用もスムーズに進み、入社後の活躍も期待できます。社員の個人的なつながりを最大限に活かすことで、効率的で効果的に人を見つけることができるのです。

グローバル採用

 会社の仕事が国境を越えて広がっている今、国籍や文化背景にとらわれず、世界中から良い人材を迎え入れる「グローバル採用」は欠かせません。色々な文化背景、言葉、考え方を持つ人がチームに集まることで、世界の顧客が何を求めているのかを深く理解できるようになります。それが新しいビジネスチャンスを生み出し、国際的な競争力を強くすることにつながります。例えば、東南アジア市場に進出を計画する際、その地域の商習慣や言葉に詳しい現地出身の人を採用することで、市場への適応が格段に早まります。色々な価値観が混ざり合うことで、より革新的で世界的な視野を持った会社へと成長していくことができるでしょう。

 採用方法を増やすことは、単に採用の入り口を増やすという単純な話だけではありません。それぞれの採用方法、例えば新卒と中途、色々な仕事をこなせる人(ゼネラリスト)と専門家(スペシャリスト)といった人のタイプに合わせて、会社側も人を評価する基準、入社後の教育プログラム、そして将来のキャリアプランの作り方を細かく見直す必要があります。すべての社員がそれぞれの個性や能力を最大限に発揮し、会社で活躍できるような仕組みを全体的に整えることが、会社が長く成長するためには欠かせません。

 人事や労務を担当する皆さんには、一つの基準ではなく、一人ひとりの特徴や得意なことを大切にした、柔軟で多様性あふれる人事制度を構築することが強く期待されています。多様性とは、まさに新しいアイデア(イノベーション)を生み出す源です。違う背景を持つ人々が互いに良い刺激を与え合い、新しい価値を創造できるような会社を、ぜひ一緒に作っていきましょう。違いを力に変え、未来を切り開く会社の実現を目指すことが、今の時代の人事や労務担当者の最も大切な役割の一つと言えるでしょう。

大切なポイント

 色々な採用方法を成功させるためには、それぞれの採用方法の特性をよく理解し、それぞれに合った評価の基準と教育の仕組みを作ることが最も重要です。単にたくさんの入り口を開くだけでなく、その後の受け入れ体制がなければ、色々な人が本当の力を発揮できません。特に、会社の文化に慣れるためのサポートや、違うキャリアプランを持つ人への柔軟な評価制度が、長く働いてもらい、活躍してもらうための鍵となります。

気を付けること・課題

 色々な採用方法には多くのメリットがある一方で、いくつか気を付けるべき点もあります。例えば、採用の入り口を増やすことは、採用の手続きを複雑にしたり、管理にかかる費用を増やしたりする可能性があります。また、中途採用やグローバル採用が増えることで、会社の文化に馴染むのが難しくなったり、今いる社員との間で意見の食い違いが生まれたりするリスクも考えられます。さらに、色々な経験を持つ人の評価やキャリアプランの設計は、一つの人事制度だけでは対応しきれないため、人事部門にはより高い専門性と柔軟性が求められます。これらの課題を乗り越えるためには、採用の目標をはっきりさせること、効果的な新入社員の受け入れプログラム(オンボーディング)を入れること、そして会社内での継続的なコミュニケーションが欠かせないでしょう。