第23章:日本ならではの働き方を考え直そう!新しい働き方にチャレンジ

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 昔ながらの日本の働き方は、かつては日本の経済を大きく成長させてきました。しかし、現代のように世の中がどんどん変わる中、たくさんの問題が出てきています。「一度会社に入ったら定年まで」「働いた年数で給料が決まる」「新卒の人を一斉に採用する」といったやり方は、昔は社員に安心感をもたらし、会社への愛情を深めることにつながりました。ですが、今は会社の成長や、一人ひとりの可能性をじゃましている部分もあります。これからの時代に合った新しい働き方を作っていくためには、このシステムをしっかり見直して、これからの時代を担う人材を育てていく必要があります。

「終身雇用」の課題と、これからのキャリアの考え方

 「一度入社したら定年まで」という終身雇用の考え方は、かつては社員に安心感をもたらし、会社への愛情を深めることにつながりました。しかし、現代のように変化の速い時代では、このやり方が「壁」になってしまうこともあります。

  • 個人の成長が止まってしまうかも: 同じ会社や仕事に長くいると、身につくスキルや経験が偏ってしまうことがあります。そのため、他の分野でステップアップするのが難しくなるかもしれません。例えば、ある社員が会社以外の場所でも役立つ新しいスキルを学びたいと思っても、それが今の仕事に直接関係ない場合、会社からのサポートが得られにくく、学ぶチャンスを逃してしまうことがあります。
  • 会社が新しいことに挑戦しにくい: 外からの新しい考え方や、いろいろな経験を持つ人が会社に入りにくいと、会社の考え方が古くなり、新しいアイデアや工夫が生まれにくくなります。会社が世の中の変化や技術の進歩についていけず、成長のチャンスを逃してしまう危険性も高まります。
  • 「やる気」が下がってしまう: 若い社員ややる気のある社員が「この会社にいても、自分の意見は聞き入れてもらえない」「新しいことに挑戦しにくい」と感じてしまうと、仕事へのやる気が失われます。その結果、仕事のパフォーマンスが下がったり、会社を辞めてしまったりすることにつながる可能性もあります。

「年功序列」がもたらす不満とやる気の低下

 「長く勤めれば、役職も給料も上がる」という年功序列の制度は、経験豊富なベテランを大切にする良い面もありました。しかし、これもまた、現代の「能力や成果で評価する」という考え方と合わない部分が増えています。

  • 優秀な若手社員の不満: どんなに素晴らしい成果を出しても、年齢や勤続年数が評価のほとんどを占めるため、若くて優秀な社員が正しく評価されず、やる気をなくしてしまうことがあります。例えば、ある若手社員が画期的なプロジェクトを成功させ、会社の業績に大きく貢献したとしても、同期や先輩社員との給料や昇進に大きな差がつかない場合、「これでは頑張っても報われない」と感じてしまうでしょう。
  • 会社の元気がなくなる: 成果ではなく、年数で評価される環境では、新しいことに挑戦したり、もっと良い成績を出そうとしたりする気持ちが薄れてしまいます。その結果、会社全体の元気がなくなる恐れがあります。社員が「昔のやり方のままでいい」「波風を立てたくない」という考えになりやすいことも指摘されています。
  • 人件費が高くなる: 高齢化が進む中で、年齢が上がるにつれて給料も上がるシステムは、会社が社員に支払うお金(人件費)を増やし、会社の経営を難しくする原因となることもあります。特に、経済が不安定な時代では、会社の存続に関わる問題になりかねません。

「新卒一括採用」の課題と多様性の必要性

 「毎年春に新しい卒業生をまとめて採用し、会社で育てる」という新卒一括採用は、日本企業が独自の文化を作る上でとても大きな役割を果たしてきました。しかし、この仕組みにも、現代社会に合わない面が見られます。

  • 多様な人材を逃してしまう: 新卒の時期に、特定の会社の文化に合う人材をたくさん採用するやり方は、中途採用や、さまざまな経験を持つ人を受け入れにくくしてしまいます。国際的な競争が激しくなる中で、会社が新しい視点や世界的な感覚を取り入れるチャンスを失うことにつながります。
  • 学生への負担が大きい: 就職活動が特定の時期に集中することで、学生は勉強や自分を磨く時間を削って就職活動に集中せざるを得なくなります。自分が本当に何をしたいのか、どんなキャリアを築きたいのかを深く考える時間もなく、周りに流されて就職先を決めてしまうケースも少なくありません。
  • ミスマッチが起きやすい: 短期間の選考では、学生と会社が深くお互いを理解するのが難しく、入社した後に「思っていたのと違った」というミスマッチが起こりやすくなります。これが早い退職につながることもあり、会社にとっても個人にとっても大きな損になってしまいます。

 これらの昔ながらのシステムが抱える問題は、データを見てもはっきりしています。日本の従業員エンゲージメント(仕事へのやる気や会社への愛着)は世界的に見ても低い水準にあります。これが会社の生産性(どれだけ効率よく成果を出せるか)を上げるための大きな壁となっているのです。さらに、社会人が自分で勉強する時間が他の国と比べてとても少ないというデータは、一人ひとりが新しいスキルを身につけ、変化に対応していくチャンスが足りていないことを示しています。多くの会社がこれらの問題を認識し、「変えなければならない」と感じているにもかかわらず、実際に行動に移せているのはまだ一部にとどまっています。

 このような状況は、私たちが働く上で「なぜかやる気が出ない」「新しいことが生まれにくい」と感じる原因になっていると言えるでしょう。しかし、これは同時に、大きく改善できる可能性を秘めていることを意味します。

クリティカルポイント:個人の自律性と会社の柔軟性

 これまでの日本の働き方は「会社に所属すること」や「安定」を大切にしてきました。しかし、これからの時代に求められるのは、「個人の自律性(自分で考えて行動すること)」「組織の柔軟性(変化に合わせられること)」です。一人ひとりが自分のキャリアを自分で考え、学び、選べる環境。そして、会社がさまざまな人材を受け入れ、変化に素早く対応できる柔軟な組織を作る。この二つの要素が、未来の競争力を生み出すカギとなります。

反証・課題:変化への抵抗と、実際に変えることの難しさ

 もちろん、長い間根付いてきたシステムを変えることには大きな課題がたくさんあります。

  • 昔からの社員の抵抗: 特に年功序列で優遇されてきた世代からは、「これまでの努力が報われない」といった不満の声が上がる可能性があります。
  • 変化のための費用とリスク: 新しい評価制度を導入したり、スキルを学び直すためのサポートをしたりするには、たくさんのお金と時間、そして失敗するリスクが伴います。
  • 「新しい安心」をどう作るか: 終身雇用がなくなることで生まれる個人の不安に対して、会社はどのように「新しい形の安心」を提供していくのか、その答えを見つける必要があります。例えば、安定した環境でなくても、いつでも市場価値を高められる学習の機会を提供したり、転職のサポートをしたりすることなどが考えられます。
  • 経営者の意識改革: 経営者自身が「人材は会社を行き来するものだ」という意識を持ち、外部の人材を積極的に登用したり、社員の挑戦を応援したりする文化を作れるかが問われます。

 人事労務担当者の皆様には、これらの課題を乗り越え、従来のシステムの良い部分(例えば、チームワークや助け合いの気持ち)は残しつつ、時代に合わせて柔軟に変革していくという、とても重要な役割が期待されています。変化は不安を感じさせるものですが、その先に、もっと活気があり、一人ひとりが輝ける新しい働き方と、強くしなやかな会社が待っています。一歩ずつ、着実に改革を進めていきましょう。