2026年の地政学的現実、その複雑な様相
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2026年の世界情勢を見渡すと、私たちは今、かつてないほど複雑で、まさに予測困難な時代を生きているのだと痛感します。複数の大国がそれぞれに影響力を競い合う「多極化」が進む一方で、残念ながら地域紛争の火種は絶えず、国際協力の足並みもどこか揃わない。そうした「不安定化」の波が同時に押し寄せているのが現状ではないでしょうか。
冷戦終結を迎え、1990年代に一瞬だけ広がった「これで歴史は終わり、世界は平和な民主主義の時代を迎える」といった、あの楽観的な見方は、今や完全に打ち砕かれてしまいました。現実はどうでしょう。世界はまさに、大国同士が覇権を争う、より本質的な時代へと本格的に突入している、そう感じざるを得ません。
中でも特に目を引くのは、アメリカと中国の間で日に日に激しさを増す対立でしょう。これは単に経済的な競争に留まる話ではありません。最先端技術の開発競争から、宇宙やサイバー空間といった新たなフロンティアでの軍事力の拡大、さらには民主主義と権威主義という、いわば「思想」の領域に至るまで、あらゆる面でこの対立は深く、根源的なものとなっているのです。まるで過去の冷戦時代を彷彿とさせるように、世界が二つの大きな陣営へと緩やかに分かれつつある、「新たな冷戦構造」がじわりじわりと形成されつつある、そう捉えることもできます。
こうした世界の構造的な変化は、単に力のバランスが移り変わるだけの話ではない、と私は考えています。それぞれの国が何よりも大切にする「価値観」や、世界をどのように見据えるかという「世界観」そのものが、根本的に対立している状況を示しているのです。例えば、個人の自由や民主主義を重んじる西側の国々と、国家の統制や秩序を優先する東側の国々との間には、時に埋めがたいほどの深い溝が存在しているように見受けられます。
では、この地政学的な変化をより深く理解するために、少しだけ過去数十年の流れを一緒に振り返ってみましょうか。
まず、記憶に新しいのは「冷戦終結と楽観の時代」です。1991年、ソ連の崩壊はまさに歴史的な出来事でした。米ソによる東西冷戦が終わりを告げた時、多くの人々は、イデオロギー対立が解消され、世界全体が民主主義と自由経済の道を歩むと、心から期待しましたよね。国境を越えた人、モノ、そして情報の移動が活発になり、「地球規模での協力(グローバル化)が進むはずだ」と誰もが信じて疑いませんでした。国連をはじめとする国際機関の役割がより重要視され、対話を通じてあらゆる問題が解決される、そんな希望に満ちた時代が確かにあったのです。
しかし、次に訪れたのは「中国の急速な台頭」でした。2000年代以降、中国は驚異的な経済成長を遂げ、あっという間に世界第2位の経済大国へと駆け上がりました。その経済力は惜しみなく技術開発にも注ぎ込まれ、5G通信、人工知能(AI)、そして宇宙開発といった分野では、目覚ましい進歩を見せています。さらに「一帯一路」構想などを通じて、アジア、アフリカ、ヨーロッパの多くの国々にインフラ投資を行い、その影響力を地球規模で拡大させたのはご存知の通りです。これにより、これまでアメリカ一強だった世界の秩序に、大きな変化が生じ始めた、まさにその転換点だったと言えるでしょう。
そして、私たちは「激化する大国間競争」という段階へと移行しました。中国の台頭は、当然ながら既存の国際秩序を維持しようとするアメリカとの間で、避けられない緊張関係を生み出しましたね。経済的な優位性を巡る貿易摩擦、ハイテク分野での主導権争い、さらには南シナ海や台湾を巡る軍事的な緊張など、あらゆる分野で競争は激化の一途を辿っています。これは単なる個別の問題の積み重ねではなく、世界をどちらの国が主導していくのか、という極めて大きな権力闘争の局面を迎えている、そう捉えるべきでしょう。
現在、私たちはまさに「新たな冷戦構造の形成」という段階に直面しています。これはかつての冷戦とは少し様相が異なります。直接的な軍事衝突よりも、経済的な連携のブロック化、技術覇権を巡る規制、そして情報戦やサイバー攻撃といった「ハイブリッド戦争」の要素が非常に強いのが特徴です。民主主義陣営と権威主義陣営という二つの大きなグループが、それぞれ独自のサプライチェーン(供給網)を構築しようとしたり、互いの技術や情報を制限しようとしたりする動きが、ますます顕著になっているように見えます。この結果、国際協力は分断され、多くの国々が「さて、どちらの陣営につくべきか」という厳しい選択を迫られる状況に陥っているのではないでしょうか。
こうした背景の中で、私たちに特に大きな衝撃を与えた出来事と言えば、ロシアによるウクライナ侵攻を挙げないわけにはいきません。この出来事は、国際社会が長い年月をかけて築き上げてきた「力による現状変更は許されない」という原則が、いとも簡単に、そして無残にも破られる現実の脅威を、世界中に突きつけました。国際法や外交努力だけでは、残念ながら武力行使を止めることができない場合があるという、非常に厳しい教訓を私たちは改めて認識させられた、そう深く感じています。目を中東地域に移せば、宗教的・民族的な対立や大国の思惑が複雑に絡み合い、新たな紛争が頻繁に勃発しています。また、アフリカ大陸では、豊富な資源を巡って各国や多国籍企業、さらには大国間の競争が激化しており、これもまた地域の不安定化を招く大きな要因となっていると言えるでしょう。
さらに、地球規模の課題として、気候変動の問題は地政学的リスクを増幅させる、極めて深刻な要因となりつつあります。異常気象による水不足や食糧危機は、人々の生活基盤を根底から脅かし、大規模な人口移動(いわゆる「気候難民」の発生)を引き起こす可能性を秘めています。これにより、受け入れ国と出身国の間で新たな緊張が生まれたり、限られた資源を巡る国家間の対立が激化したりする未来も、決して絵空事ではありません。そして、ドローンやAI、バイオテクノロジーといった急速なテクノロジーの発展は、私たちの生活を豊かにしてくれる一方で、新たな兵器の開発や監視社会の構築といった、人類にとって前例のないリスクを同時にもたらしていることも忘れてはならないでしょう。このように、2026年の地政学的現実は、多層的で複合的な課題が複雑に絡み合い、まさに極めて不安定な状態にあると、私は強く認識している次第です。

