第29章:新しいことを学ぶ(リスキリング)を進めよう
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今の社会は、ものすごいスピードでどんどん変わっています。新しい技術が次々と出てきて、昨日まで最新だった知識や技術が、あっという間に古くなってしまうこともめずらしくありません。こんな時代では、一度身につけた知識や能力だけで、長く仕事を続けるのはとても難しいことです。だからこそ、「新しいことを学ぶ(リスキリング)」が、私たち一人ひとりのキャリアを豊かにし、未来を切り開くための大切なカギとなります。これは、ただ資格を取ったり、新しい技術を覚えたりするだけではありません。自分の可能性を広げ、変化にうまく対応できる力を育てる、一生続く学びのプロセスなのです。
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新しいことを学ぶ(リスキリング)を成功させる5つのステップ
新しいことを学ぶというのは、「何かを学ばなきゃ」と漠然と考えているだけでは、なかなかうまくいきません。効果的に学びを深め、良い結果を出すためには、計画的に進めることが大切です。ここでは、新しいことを学ぶ旅を成功させるための、具体的な5つのステップをご紹介します。
1. 今持っているスキルを確認し、将来に向けて足りない部分を見つけよう
まず最初にすることは、自分が今どんなスキルを持っているのかをしっかり知ることです。これまでの仕事で身につけた専門知識や技術はもちろん、人とのコミュニケーション能力、問題を解決する力、協力する力といった、どんな仕事でも役立つ「ソフトスキル」も全部書き出してみましょう。次に大切なのは、5年後、10年後、あるいはもっと先の未来で、自分が目指す仕事の道(キャリアパス)に必要なスキルは何かを考えることです。業界の流行、AIやデジタル技術の進化、社会のニーズの変化などをいろんな角度から調べて、今持っているスキルと将来必要なスキルとの間にどんな「足りない部分(ギャップ)」があるのかをはっきりさせます。例えば、営業職の方なら、これまでの対面での営業スキルに加えて、デジタルを使った宣伝やオンラインでの発表スキルが将来必要になるかもしれません。客観的な自己評価ツールを使ったり、キャリアコンサルタントに相談したりするのも良い方法です。
2. 具体的な学習計画を立てよう
将来必要なスキルが見えてきたら、それを身につけるための具体的な学習計画を立てましょう。この計画は、ただ「〜を学ぶ」という目標ではなく、「いつまでに」「どうやって」「どのくらいのレベルまで」といった細かい部分まで決めることが、成功の秘訣です。「半年以内にPythonの基本を覚えて、簡単なデータ分析ができるようになる」「来年までにTOEICで800点を超えるために、毎日30分オンライン英会話をやる」といったように、SMART原則(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性がある、Time-bound:期限がある)に沿った具体的な目標設定が大切です。また、勉強方法についても、オンライン講座、専門学校、本、社内研修、OJT(実地訓練)など、たくさんの選択肢の中から自分に一番合うものを選び、無理なく続けられるスケジュールを組むようにしましょう。
3. 実際にやってみて、結果を出すことを意識して学び続けよう
計画を立てたら、いよいよ勉強を始めます。ここで大事なのは、ただ知識を入れるだけでなく、積極的に「アウトプット」(学んだことを外に出す)することを意識することです。例えば、プログラミングを学んだら実際に小さなアプリを作ってみる、マーケティングの考え方を学んだらSNSで情報を発信したりブログ記事を書いてみたりするなど、学んだことを「使う」機会を自分で作り出すことが大切です。知識を入れる(インプット)と、外に出す(アウトプット)を繰り返すことで、知識はより深く定着し、実際に使えるスキルへと変わっていきます。また、仲間と一緒に学ぶ「学習コミュニティ」に参加するのも良い方法です。お互いに教え合ったり、良い刺激を与え合ったりすることで、やる気を保ち、もっと効果的な学習が期待できます。
4. 学んだスキルを仕事で積極的に使ってみよう
新しいスキルを身につけたら、それを実際の仕事で積極的に使うチャンスを探しましょう。どんなに素晴らしいスキルも、使わなければ錆びつき、やがて忘れられてしまいます。例えば、新しくデータ分析のスキルを身につけたのであれば、いつもの仕事の報告にデータに基づいた分析結果を加えてみる、会議資料に新しい視点からのグラフを入れてみるなど、まずは小さなことからでもやってみることが大切です。最初は完璧でなくても大丈夫です。挑戦すること自体が、そのスキルをさらに磨き上げ、自分の自信にもつながります。上司や同僚に相談し、新しいプロジェクトに参加したり、新しい役割に挑戦したりすることも、スキルを活用する良い機会になるでしょう。
5. 終わりがない学びの旅、常に新しい知識を取り入れよう
新しいことを学ぶのは、一度やったら終わりではありません。技術や社会は常に変化し続けているので、一度学んだら終わりではなく、常にスキルを新しくしていく姿勢が何よりも大切です。定期的に自分のスキルマップを見直して、新しい学習目標を立て、常に学び続けるサイクルを回し続けること。この「一生学び続ける(生涯学習)」という視点を持つことが、予測できない時代を生き抜くための最も強力な武器となります。最新の情報を手に入れるためのニュースレターを購読したり、業界のイベントに参加したり、専門書を読む習慣なども、新しい知識を取り入れ続けるのに役立つでしょう。
会社側の役割:社員の成長を応援する環境を作ろう
新しいことを学ぶ(リスキリング)は、個人の努力だけに任せるものではありません。社員が安心して、そして前向きに学び直しに取り組めるように、会社側も積極的にサポートする体制を整えることが、これからの時代を生き抜くために必要不可欠です。例えば、仕事時間の一部を勉強にあてることを認めたり、オンライン講座の受講料や教材費を助けたりするなど、お金の面でのサポートは、社員の学ぶ意欲を大きく引き出します。さらに、新しいスキルを身につけた社員が、その能力を十分に発揮できるようなキャリアプランや、新しい役割・プロジェクトを与えることも大切です。せっかく学んだスキルが活かされないのでは、社員のやる気も下がってしまいます。また、質の高いオンライン学習サービスを入れるなど、学習環境そのものを整えることも、社員全体の学び直しを進める上で大きな助けとなるでしょう。
個人の気持ち:変化を楽しんで、自分で未来を作ろう
もちろん、新しいことを学ぶ主役はあくまでも自分自身です。会社からのサポートは大切ですが、自分の気持ちと行動がなければ成長はありません。私たちは、変化を怖がるのではなく、むしろ新しい挑戦や学ぶ機会として積極的に捉える気持ちを持つことが求められます。これまで経験したことのない分野に挑戦してみたり、苦手だと思っていたデジタルツールを使ってみたりと、一歩踏み出す勇気が大切です。そして、「学ぶこと自体を楽しむ」という姿勢を持つこと。好奇心を持って学び続ければ、小さな成功体験が積み重なり、それが大きな自信へとつながります。同僚や社外の仲間と一緒に学び、お互いに刺激し合うことで、一人では乗り越えられなかった壁も、みんなで乗り越えられることがあります。新しいことを学ぶのは、未来の自分への最高な投資なのです。
新しいことを学ぶ(リスキリング)は、年齢や役職、経験に関係なく、すべてのビジネスパーソンにとって、今や必ず取り組むべきことです。特に、AI(人工知能)の進化や自動化が進むことで、将来的に仕事の内容が大きく変わる可能性が高い仕事では、早めに準備しておくことが将来のキャリアを左右します。しかし、これは決して不安をあおるものではありません。むしろ、新しい可能性の扉を開き、自分のキャリアの選択肢を無限に広げる絶好のチャンスと捉えるべきです。新しいスキルを身につけることで、これまで想像もしなかったような仕事に挑戦できたり、もっと専門性の高い役割を担えるようになったり、あるいは自分自身のビジネスを始める道も見えてくるかもしれません。人事労務を担当する皆様には、社員一人ひとりが積極的に新しいことを学べるように、効果的なサポート制度を作り、常に学び続ける組織の文化を育むリーダーシップが強く期待されています。変化を怖がらず、むしろその変化をチャンスと捉え、会社全体の成長につなげていきましょう。
大切なポイント
- 新しいことを学ぶのは、ただ研修に参加するだけでなく、「身につけたスキルを仕事で活かして、キャリアアップにつなげる」というはっきりした目標意識が大切です。会社は、学ぶ機会を提供するだけでなく、スキル活用を促す人事制度や、部署異動などを柔軟にできるようにすべきです。
- 個人が「学びたい」と思うことと、会社が「戦略的に必要としているスキル」のズレをなくすため、「会社としてどんなスキルが必要なのか」を明確に伝え、それに基づいた学習のすすめやキャリアプランを示すことが不可欠です。
- 新しいことを学ぶ効果はすぐには出ないため、「長い目で見た投資」として捉え、短期的な結果にとらわれず、継続的にサポートすることが、会社の競争力を強くすることにつながります。
課題と乗り越えるべきこと
- 時間とお金の問題:多くの社員は普段の仕事で手いっぱいで、勉強時間を確保するのが難しいと感じています。また、質の高い学習プログラムは費用がかかるため、個人だけの負担では限界があります。会社として、仕事時間内での学習を奨励したり、費用を全額補助したりするなど、具体的なサポート策が不可欠です。
- 学習効果の分かりにくさ:新しいことを学ぶことで身についたスキルが、どれくらい仕事に役立っているのか、あるいは個人の市場価値をどれだけ高めたのかを数字で評価するのは難しい面があります。評価の基準があいまいだと、学習意欲が下がったり、会社が投資の効果を見つけにくい原因になることがあります。
「新しいスキルは必要ない」という考え方:一部の社員、特に経験豊富なベテラン社員の中には、これまでのやり方で十分だと考えており、新しいことを学ぶ必要性を感じていないケースもあります。新しいことを学ぶ大切さを会社全体に広め、年齢や役職に関わらず前向きに取り組む文化を作るには、経営層からの強いメッセージと、具体的な成功例を示すことが求められます。

