第33章:いろんな働き方を応援しよう!
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今の社会では、働き方についての考え方が大きく変わってきています。決まった働き方だけでは、会社もそこで働く人も、成長し続けるのは難しい時代です。
私たちは、一人ひとりの個性や人生の段階、将来の目標に合わせて、もっと柔軟で多様な働き方を積極的に進める必要があります。これが、従業員が自分の力を最大限に発揮し、イキイキと働くための大切なカギとなるでしょう。みんなが持っている隠れた力や新しいアイデアを引き出し、会社全体の成果や新しいものを生み出す土台になるはずです。
いろんな働き方を認めることは、社員の満足度を上げるだけではありません。優れた人材を会社に呼び込み、長く働いてもらうための強い魅力になります。今の仕事を探す場では、会社がどんな働き方を選べるかが、就職先を決める大きなポイントの一つです。
柔軟な働き方を提供することで、会社はより多くの、才能ある人たちと出会えるようになり、結果として会社の競争力はぐんと高まります。逆に、古い考え方で働き方を押し付けると、将来を担う大切な人材を他の会社に取られ、会社の活気が失われる大きなリスクになるでしょう。
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1.会社以外の仕事(兼業・副業)を積極的に認め、応援しよう
今のビジネスの世界は変化が激しく、社員が自分のスキルや経験を会社の外で活かす「兼業・副業」は、個人の成長だけでなく、会社にもたくさんの良いこと(メリット)をもたらします。
例えば、ある社員が副業で地域のイベント企画に携わることで、プロジェクトをまとめる力や、お客さんに商品をアピールする知識を深め、その学びを会社の仕事にも役立てることができます。
この制度を会社で始める時には、次の点に気をつけましょう。
- 社内ルールをはっきりと決める: どんな兼業・副業ができて、どうやって申請するのか、時間の管理はどうするのかなどを具体的に決めれば、社員は安心して制度を使えます。
- 情報が外に漏れないように徹底する: 会社の秘密の情報の扱い方について研修したり、契約で決まりを設けたりして、会社のリスクを最小限に抑えます。
- 会社の仕事への影響を管理する: 兼業・副業が会社の仕事の成果(パフォーマンス)に悪い影響を与えないように、定期的に話し合ったり、状況を確認したりして、社員の負担を適切に把握し、サポートする体制を整えましょう。
こうした取り組みは、社員のスキルアップや新しい考え方の発見を促し、結果として会社全体の新しいアイデア(イノベーション)を加速させる効果が期待できます。
2.会社以外の場所で働く(リモートワーク)を進め、環境を整えよう
オフィスに行かずに仕事をする「リモートワーク」は、今の働き方を象徴するものです。働く場所を選ばないことで、社員は自分の生活リズムに合わせて、柔軟な働き方を選べるようになります。
例えば、遠くに住んでいる優秀な人を採用できるようになったり、子育てや介護と仕事を両立しやすくなったりと、会社と個人の両方にとってメリットが大きいです。会社への通勤時間が減ることで、社員の心や体の負担が軽くなり、その時間を自分を磨いたり、家族と過ごしたりすることに充てられます。結果として、仕事の成果が上がり、健康増進にも繋がります。
リモートワークをうまく進めるためには、次のことが絶対に必要です。
- 充実したIT環境を整える: 速いインターネットや、会社のシステムに安全に繋がる仕組み(VPN)、オンライン会議のシステム、みんなで一緒に作業できるクラウドツールなど、リモートで仕事をするのに必要なデジタル環境を完璧に整えましょう。
- 効果的な話し合いの方法を工夫する: 直接会って話す機会が減る分、チャットツールやビデオ会議、プロジェクト管理ツールなどを活用して、チーム内や他の部署とのスムーズな情報共有と意見交換(コミュニケーション)を促します。
- 成果を重視する評価の仕組みに変える: 社員がどこで働いていても、出した成果の質や量で公平に評価される仕組みを作ることが大切です。そうすることで、リモートワークでも高いやる気を保てます。
リモートワークは、場所の制約を超えて多様な人材を受け入れることができるだけでなく、災害が起きた時などの事業を続けるための重要な戦略にもなります。
3.働く時間を自由に選べる(フレックスタイム制度)を導入しよう
「フレックスタイム制度」は、社員が毎日の仕事の開始時間と終了時間を自由に決められる制度です。これにより、社員は自分の生活リズムや個人的な予定(例えば、子どもの送り迎え、病院の予約、勉強など)に合わせて、一番効率的で心地よい時間帯に働くことができます。
これは、子育てや介護といった人生の大きな出来事と、仕事のキャリアを両立させる上で、とても大きな助けとなり、社員の会社へのやる気(エンゲージメント)を高めるのに非常に効果的です。
この制度をうまく運用するためには、次のポイントが重要です。
- コアタイム(必ず働く時間帯)を決める: チームの連携を保つために、全員が会社にいる時間帯を「コアタイム」として設定することで、必要な会議や情報共有の時間を確保できます。ただし、コアタイムは必要最小限にし、制度の柔軟さを損なわないように配慮が必要です。
- チーム内の調整ルールをはっきりさせる: チームのメンバー同士で仕事の調整や引き継ぎに関するルールをはっきりさせ、お互いの働き方を尊重し合う文化を育てていきましょう。
- 働く時間を適切に管理する: フレックスタイム制であっても、社員の健康を守り、働きすぎを防ぐために、労働時間をしっかり把握・管理し、必要に応じて適切なアドバイスをします。
フレックスタイム制度は、社員がもっと主体的に働き方をデザインできるため、仕事への責任感(オーナーシップ)を高め、結果として仕事の成果を上げることに貢献します。
その他のいろんな働き方を応援しよう!
上にあげたもの以外にも、社員のいろんなニーズに応えるための様々な働き方があります。これらを組み合わせることで、もっと細やかなサポートができるようになり、会社全体の魅力を高めることができます。
1.短時間勤務の制度を増やす
子育てや介護、自分を磨くための勉強、病気の治療など、様々な理由で毎日フルタイムで働くのが難しい社員のために、勤務時間を短くできる制度を設けましょう。例えば、週4日勤務や、1日の労働時間を6時間にするなど、一人ひとりの状況に合わせた選択肢を提供することで、大切なキャリアを中断することなく仕事を続けられる環境を整えます。
これにより、優秀な社員が会社を辞めるのを防ぎ、長くキャリアを築くことを応援します。例えば、子育て中の社員が夕方に子どもを迎えに行けるように勤務時間を短縮したり、介護が必要な家族を持つ社員が定期的に病院に付き添えるようにするケースなどが考えられます。
2.週休3日制の導入を検討する
これまでの週休2日制に加えて、週4日勤務で週休3日を実現する制度の導入を考えてみましょう。増えた休日を、社員は自分の勉強(リスキリング)、ボランティア活動、趣味、家族との時間、あるいは心と体のリフレッシュに使うことができます。
これにより、社員の仕事と生活のバランス(ワークライフバランス)が劇的に良くなり、仕事へのやる気アップや新しいスキル習得に繋がり、結果的に仕事の成果や新しいアイデアを生み出す力の向上に貢献します。例えば、ITスキルを身につけるためのオンライン講座を受けたり、地域に貢献するためのボランティア活動に参加したりする社員が増える可能性があります。
3.長期休暇制度(サバティカル休暇)を導入する
会社に長く勤めている社員向けに、数ヶ月から1年程度の長い休みを取れる「サバティカル休暇制度」を設けましょう。この期間、社員は仕事から離れ、旅行、留学、研究、ボランティア活動など、自分の成長や心身のリフレッシュに集中することができます。
長い目で見たキャリア形成を考え、仕事の質を高める上で非常に有効です。例えば、海外の大学院で専門分野を学び直したり、NPO活動を通じて社会貢献を行うことで、新しい視点やリーダーシップスキルを養い、会社に戻った後にその経験を仕事に活かすことが期待されます。
人事労務を担当する皆さんには、これらの制度をただ用意するだけでなく、社員が「安心して」「気軽に」利用できるような会社の文化や雰囲気作りに全力を尽くしてほしいと強く願っています。どんなに素晴らしい制度があっても、上司や同僚の理解が得られなかったり、「制度を使うと評価が下がるのではないか」という不安があったりする職場では、その制度は形だけになってしまい、本来の目的は達成できません。
例えば、上司が率先してフレックスタイムを活用し、その良い点を部下に伝える、リモートワークで成果を出した社員を積極的に評価する、といった具体的な行動が重要です。
いろんな働き方を支持し、それを当たり前の選択肢として受け入れる会社の文化を育てるためには、経営層からの強いメッセージと、管理職層への丁寧な研修が欠かせません。一人ひとりの社員が、自分の個性や状況に合わせて一番力を発揮できる働き方を自由に選べる。そのような柔軟で、みんなを受け入れる会社こそが、これからの時代を引っ張っていくと信じています。みんなで学び、みんなで成長し、社員一人ひとりが輝ける職場を、この手で一緒に作っていきましょう。
クリティカルポイント:多様な働き方を「本当に役立つもの」にするカギ
いろんな働き方を導入する上で一番大切なのは、単に制度を作るだけでなく、それが会社全体で「本当に役立つ」状態を作り出すことです。形だけの制度導入では、かえって社員の不満や不公平感を生む可能性があります。
例えば、リモートワークの制度があっても、結局はオフィスに行かないと大切な情報が共有されなかったり、評価されにくかったりする「見えない壁」がある場合、その制度は意味がありません。
この大切なポイントを乗り越えるには、次のことが欠かせません。
- 公平な評価基準と情報共有を徹底する: どこで、どのように働いていようとも、社員の頑張りが正しく評価される仕組みを作り、すべての情報が公平に手に入る環境を整えることが重要です。
- マネジメント層(管理職)の意識を変え、スキルを上げる: 社員の自主性を尊重し、細かく管理しすぎる(マイクロマネジメント)のをやめて、「信頼に基づいたマネジメント」に切り替えることが求められます。いろんな働き方を前提とした話し合いのスキルや、目標を管理する力を育てることが大切です。
- 会社の文化に浸透させる: いろんな働き方を「当たり前」と捉え、それを推奨する会社の文化を育てましょう。経営層が率先して多様な働き方を実践し、その価値を継続的に伝え続けることで、社員に安心感を与えます。
反証・課題:いろんな働き方がもたらすかもしれない問題点と解決策
いろんな働き方はたくさんの良い点をもたらしますが、同時にいくつかの隠れた問題やリスクもあります。これらをあらかじめ知っておき、適切な対策を講じることが成功へのカギとなります。
- コミュニケーション不足とチームの一体感の低下: リモートワークやフレックスタイムの導入で、たまたま話す機会が減り、チーム内の繋がりや一体感が損なわれる可能性があります。これに対する解決策としては、定期的にオンラインで「ちょっとしたおしゃべりの時間」を設けたり、実際に会ってチームの絆を深める活動を計画したり、全員が参加できる気軽な情報共有の場を作ったりすることが挙げられます。
- 働く時間の曖昧さによる働きすぎのリスク: 社員が自分で働く時間を選べる反面、仕事とプライベートの区別が曖昧になり、結果的に働きすぎに繋がりやすい側面があります。この問題には、社員自身による適切な時間管理の教育、働く時間をしっかり記録し見守る(モニタリング)ことの強化、そして管理職が積極的に休憩を促す声かけが有効です。
- セキュリティのリスクが増える: 社員がオフィス以外の場所から会社のシステムにアクセスすることで、情報が漏れたり、サイバー攻撃を受けたりするリスクが高まる可能性があります。これには、しっかりとしたセキュリティのルールを作り、みんなに知らせること、複数の方法で本人確認をする(多要素認証)導入、社員への定期的なセキュリティ研修の実施、安全な接続(VPN)の徹底などが欠かせません。
- 不公平感が出てくる可能性: 制度の利用状況によっては、制度を使う社員と使わない社員の間で不公平感が生まれる可能性があります。例えば、短時間勤務の社員に大切なプロジェクトが任されにくい、リモートワークの社員が昇進しにくいといったケースです。これには、評価の仕組みを徹底的に見直し、制度利用の有無に関わらず、会社への貢献度に基づいて評価される仕組みを構築し、透明性を高めることが重要です。
これらの問題を乗り越え、いろんな働き方を会社の強みとして最大限に活かすためには、会社は常に試行錯誤を繰り返し、社員の声に耳を傾けながら、制度と文化の両面から改善を続けていく必要があります。

